「徒然日記」が訛って「づれづれ日記」に!? 笑いあり、時に涙ありのドタバタ撮影秘話や日常のあれこれをお届けします。

西高東低の冬型になり、雷が鳴りだすと決まって両親は「いよいよハタハタくるぞ〜」と楽しそうな顔をしたものでした。間もなく、魚屋さんを営んでいたわが家の店先には木箱いっぱいに詰まったハタハタがうず高く積まれ、それを買いにくるお客さんで活気にあふれたものでした。そんな記憶がすりこみとなっているせいか。いまだに取材で訪れる漁港や魚市場で魚を見ると異常に興奮してしまいます。
 そして今から八年前。独立して間も無い頃。どうしてもハタハタ漁の撮影がしたくて旧八森町岩館に唯一残っていた手漕ぎ木造船になんとか拝み倒して船に乗せてもらいました。初めてのハタハタ漁の撮影にかなり興奮気味。我を忘れた私は網一杯のハタハタを目の前にして頭の中は真っ白!気が付いた時にはローンも払い終えていない買ったばかりの新品のカメラが海の中へ・・・。カメラはハタハタと一緒に網であげられたもののもちろん使い物にはなりませんでした。でもそんな失敗のお陰で暫くは八森の漁師さんやおばちゃん達に「カメラおどしたねっちゃん」で通るようになり、何度となく船に乗せて頂くようになりました。それからは毎年この時期になると魚屋の娘の血が騒ぎ出し。県内のハタハタ漁場である北浦や金浦などにでかけては船に乗せていただいています。
 有り難い事に、帰りには決まって沢山のハタハタをお土産に頂きます。まずは煮たり焼いたり、味付けを変えたりさまざまな料理をし、食べきれないものは保存用に漬け込みます。わが家では母親直伝の麹漬けをつくりますが、各家庭での作り方はさまざまで。飯ずし、糠漬け、麹漬けなどそれぞれの家庭で親から子へと代々受け継がれてきた味があります。
冬場の貴重なタンパク源として食卓をにぎわしてくれたこれらの保存食は、冷凍技術も流通も便利になった今となっては必要のないものかもしれませんが、子供達に伝えていきたい大事な秋田の食文化だと思っています。
 
 そして「ハタハタなしでは正月は迎えられない」といわれる程生活と密着しており、当たり前に食卓にのっていたハタハタも一時期漁獲量が減少し、平成4年から3年間漁師さん達が自主的に全面禁漁を実施。その後は漁獲量に上限を設定したりさまざまな厳しい管理のもとで漁を行っています。そのお陰で最近漁獲量は年々着実に増加しています。今年ももうすぐハタハタが接岸してくる頃となります。そして今年も豊漁である事を祈るばかりです。でも豊漁貧乏という事もあります。一庶民としてはそりゃ〜安くて美味いハタハタが買えれば嬉しい限りですが。真冬の夜の海に船を繰り出す漁師達。命がけの漁です。そんな姿を目の当たりにしている私にとって少し魚の値段も上がってほしいと願っています。さて今年はどこの漁場にでかけようかな?

朝日新聞 あきた時評より(2007年11月28日掲載)

完璧体育会系の私がなぜか新聞に書かせて頂く事になってしまいました。
もちろんうまく書く事など逆立ちしてもできません。
へたはへたなりにいままでの取材中などに感じたままを私なりに伝えていければなあ〜と思っています。