「徒然日記」が訛って「づれづれ日記」に!? 笑いあり、時に涙ありのドタバタ撮影秘話や日常のあれこれをお届けします。

「南の島に雪が降る」
そんなフレーズが頭の片隅に残っていたものの、「そんな馬鹿な、きっと外国のどこかの話だろうな」などと思っていました。
 そして風景写真を撮るようになり、その南の島が日本の屋久島のことだと知り深く感動したものでした。
 島の海岸周辺は亜熱帯気候。一方で山頂付近は亜寒帯気候で雪が降るという、日本全土の縮図とも言える特異な気候環境の島。風景写真を志す人が一度は訪れたいあこがれの島でした。
 6月上旬、屋久島での仕事の依頼が舞い込んできました。あるレコード会社の、環境に関するDVDのジャケット撮影でした。
 でもこの季節、秋田の山も新緑や花がとても美しい時期。まずは秋田をしっかり撮る方が大事だと一度はあきらめかけました。
 そんな時、大仙市の故藤田秀次さんの言葉を思い出しました。藤田さんは秋田の食文化、とりわけ餅を深く研究された方です。
 「秋田の餅を語ろうと思ったら、東北の餅を調べなくては語る事ができない」「さらに日本、いや世界中の餅を調べないことには本当の秋田の餅は見えてこないんだよ」
 そんなふうに熱っぽく語った藤田さんの言葉に背中を押され、私は屋久島に行く仕事を引き受けました。
 秋田が有する白神山地をもっと違った目で見るためにも世界遺産で日本の両雄とも言える屋久島を見ることはきっとプラスになるだろうなと。
 照葉樹林帯の森の深さと杉の巨木。人を寄せつけない威圧感に圧倒されて、どんどん島に入り込んでいきました。
 急峻な道が続く2千メートル近い山々。九州最高峰の宮之浦岳(1936メートル)では、6月とは思えない寒さのなかで満月を見ながら一晩を明かしました。すべてが美しく、至福の時間でした。
 2度目の屋久島撮影を7月下旬に終え、ゆっくりと白神山地と屋久島との違いを考えました。
 森も山もそれぞれの個性があり、生態系もまったく違います。どちらも比べられないほどの素晴らしさをを持っていると感じました。
 ただ一つ共通点があるとすれば、それは世界遺産に登録されたがゆえの様々な「観光公害」でした。
 世界遺産と言う言葉に浮かれ、無謀な登山計画で入山したり、信じられない軽装のままハイキング気分で入山する人が実に多かったのです。結果、様々な事故が多発していました。
そして増え続ける観光客に対応が間に合わず、島外からやってきた経験の少ない「速成ガイド」が多いことにも驚かされました。
 美しさの裏側に潜む山の怖さはどこでも同じ。決して山を甘く見てはいけないと思います。たとえそれが世界遺産であろうが、身近な「オラホの山」であろうが・・・。そんな事を考えさせてくれた撮影でした。

朝日新聞 あきた時評〈2〉より(2007年8月22日掲載)

完璧体育会系の私がなぜか新聞に書かせて頂く事になってしまいました。
もちろんうまく書く事など逆立ちしてもできません。
へたはへたなりにいままでの取材中などに感じたままを私なりに伝えていければなあ〜と思っています。