「徒然日記」が訛って「づれづれ日記」に!? 笑いあり、時に涙ありのドタバタ撮影秘話や日常のあれこれをお届けします。

「小松さーん、最盛期だよ!写真撮りにおいで」。岩手県田野畑村のマツタケ採りの名人からの電話に、私は喜び勇んで車を走らせました。
田舎のカメラマンにとって、春の山菜と秋のキノコの写真は欠かせません。マイタケ・ナメコ・などはある程度撮れていたものの、マイタケに匹敵するキノコの王様・マツタケの写真は撮れていません。というのも、ここ十数年の松食い虫被害の影響で秋田の松林は壊滅的な状態だからです。内陸部のマツタケ産地でも年々、松食い虫の被害で林が駄目になり、収穫量が激減しています。
 仙岩峠を超え、岩手県の沿岸部へ車を走らせると徐々にきれいな松林が見えてきます。岩手の沿岸部には松食い虫の被害がほとんど見られません。その理由をマツタケ採りの名人に質問してみたところ、「それはやませの影響でしょう!」とあっさり回答するのでした。
 脊梁山脈を境に、やませの東風は、秋田に豊作をもたらしてくれる宝の風です。仙北市田沢湖に伝わる民謡「生保内節」にも歌われているとおりです。でも岩手にとっては冷害をもたらす悪風。そんな認識を持っていた私は「目から鱗」でした。海からの冷たい風が松食い虫の侵入をこばみ、松林に適度な風を通しマツタケの生育に適した林を造るのだと聞き、なるほどと納得しました。
 マツタケはアカマツの木の下、日当たりがよく風通しの良い場所に、帯状もしくは輪状に発生します。その場所を「シロ」と呼び、名人たちはこのシロを順繰りにみて探すそうです。早速名人と松林へ。間もなく「ほらここ、ほらそっちにも」と教えてくれるのですが、私にはさっぱりわかりません。少しこんもりとした所の松葉をそっと寄せてみると、ありました。見事なマツタケが。
夜は村の宿で名人が持ち込んでくれたマツタケをたらふくごちそうになりました。
 数日後、私が「秋田の山歩きのお師匠様」と仰ぐ方から、「マイタケいっぺ採れだがら、取りにこ〜い」と嬉しい電話!今度は食べきれない位のマイタケを頂きましたが、そんな時、ふと考えました。
 最近山形県で見てきたのですが、山の斜面の所々が秋でもないのに赤茶色に変色しているのです。やはりカシノナガキクイムシによるナラ枯れ病でした。徐々に北上し昨年、秋田県でも被害が確認されました。
マイタケが生育する木はおもにミズナラの木。このまま被害が広がれば、県内のマイタケは近い将来、県産マツタケの二の舞になってしまうのでしょうか?それ以上に美しいブナ林に点在するミズナラの木が枯れてしまったらどうなるのでしょうか。おいしい天然マイタケを食べながらなにか不安になってしまいました。

朝日新聞 あきた時評〈3〉より(2007年10月24日掲載)

完璧体育会系の私がなぜか新聞に書かせて頂く事になってしまいました。
もちろんうまく書く事など逆立ちしてもできません。
へたはへたなりにいままでの取材中などに感じたままを私なりに伝えていければなあ〜と思っています。